日本公認会計士協会 準会員会

活動報告(近畿)

スタートアップ支援勉強会 Start Up CPA!活動報告

 

スタートアップ支援勉強会 Start Up CPA!

 

日本公認会計士協会準会員会近畿分会

幹事 大倉有加里

 

はじめに

 日本公認会計士協会準会員会近畿分会では平成26年8月2日に近畿会研修室にて「スタートアップ支援勉強会 Start Up CPA!」と題した勉強会を開催致しました。

 当勉強会ではパネラーとして有限責任監査法人トーマツ・トーマツベンチャーサポート株式会社 権基哲氏、新日本有限責任監査法人 廣田公美氏、有限責任あずさ監査法人 粟野隆朝氏の三名をお招きしました。パネラーの皆様は大手監査法人でスタートアップ支援に携わっており、公認会計士がスタートアップ支援を行う意義や面白さ等についてお話し頂きました。

 

勉強会の内容

1.パネルディスカッション

まず初めに、パネラーの皆様に以下のテーマでディスカッションをして頂きました。

 

◆スタートアップ支援を始めたきっかけ

権氏 監査をしている間は経営者との距離を感じていました。経営者の右腕となり、一緒に成長していきたいという思いで会計士になった経緯があり、もっと経営者が求めているものを知りたいと考えて始めました。

 

廣田氏 今後のキャリアについて、起業の支援をするのか、それとも自分で起業するかの選択で迷っていましたが、法人内で起業支援の機会を得られたことをきっかけに、スタートアップ支援に携わるようになりました。意思決定権限のある人と接することで、自身のキャリアアップに繋がっていることを実感しています。

 

粟野氏 始めたきっかけは業務命令でした。今では経営者と接する機会が得られることに魅力を感じています。

 

◆公認会計士がスタートアップ支援をおこなう意義・できること

権氏 スタートアップ支援はBIGファームがやる意義が大きいと思います。大手監査法人のネームブランドを使うことで、企業に信用を付与できるからです。支援できることとしては①販路拡大、②PR支援、③資金調達(資本政策)支援が挙げられます。具体的には、①大企業にベンチャー企業の紹介をします。大企業は資金的な余裕があるものの、ビジネスが成熟しているため新規事業を生み出すことが困難です。それに対してベンチャー企業には型破りな発想があります。両者が力を合わせることは、新規事業を生み出す可能性を高めることができ、双方にメリットがあります。しかし、どの企業と付き合うべきかを両者はわかっていないことが多いです。そこで、監査等を通じて大小様々な企業の理解がある会計士が両者の仲介を行います。②新聞などのメディアへベンチャー企業を紹介します。③ベンチャーキャピタリストの紹介等を行います。

 

廣田氏 会社が有名になる程、私利私欲で会社に大勢の人が集まってきます。その様な状況の中で、監査法人の会計士は、経済的利害で近づいてくる人達とは異なるため、経営者にとって信頼の置ける存在になることが出来ます。

 

粟野氏 ベンチャー企業の青田刈りに意義があります。将来的にIPOを成功させて、監査契約に繋げることが最終目的となります。

 

◆関西はスタートアップの受け皿となれるか

権氏 東京は大阪と比較してスタートアップに活気があります。2000年のITバブルの時に東京で成功した人の集積地が出来ており、彼等が成功モデルとなって、起業家へアドバイスを行ったり、資金調達に協力したりしています。そのため支援体制は東京は強いです。ただ、海外の投資家から見れば、東京は成熟感があるが、関西は今から成長していく期待があって面白いという意見もあります。

 

廣田氏 東京やアメリカのシリコンバレーでは資金提供が積極的に行われています。それと比べると、関西は資金提供者が少ない点で不利です。

 

粟野氏 ベンチャーキャピタルの規模が小さい点で、関西は不利です。

 

◆苦労したこと、面白さ、やりがい

権氏 経営者の話を聞いていると、本当にやりたいことと、実際にやろうとしているビジネスモデルが合っていないことがあります。しかし、経営者はアドバイスをもらうことが少ないため、そのことに気付いていないことが多々あります。その点を指摘し、経営者に「そんな観点があったのか」という発見を与えられると嬉しいです。まだビジネスモデルとして完成していないものを経営者と一緒に作り上げることにやりがいを感じています。

ただ、様々な案件について、一人で会社を回るため孤独感を感じたり、このままで自分のキャリアは大丈夫かと不安になったりすることもあります。しかし、起業家の人は前向きで面白く、その人の喜ぶ姿や成長していく姿を見ていると、自分も一緒に成長していることを実感することができます。

 

廣田氏 ほとんどの質問にすぐに答えられません。定款の作り方や契約書の作成方法等、会計とは関係のないことについて質問されるので、それに応えていくことに苦労しています。

面白さ・やりがいとしては、経営者と話していると、監査だけやっていた時には知ることができなかったことを沢山知ることができることです。これは何事にも変え難いことです。

 

粟野氏 まだビジネスがわかっていない人に対して会計士が言ったことの責任は重いと感じています。支援した会社が大きくなることや自身も経験を積んで成長できることにやりがいを感じています。

 

2.グループワーク

 参加者の皆様に「公認会計士が起業家に対して支援できること」について話し合って頂きました。会計士は調べることが得意で苦にならない人が多いという特徴から、会計以外についてもスタートアップに必要な手続きについて起業家の疑問点を調べることや、それらの手続きのパッケージを作成して販売するという案が出ました。また、会計士は監査業務や交流会等を通じて人との繋がりが広いことから、人材の紹介を行うといった案等、様々な案が出ました。これ等の案について、パネラーの皆様からも面白いとの評価を頂きました。

 

3.終わりに

 グループワークで公認会計士の特徴として「人との交流が広い」ことがあげられていたように、公認会計士は他法人の会計士、大小様々な企業の方、他士業の方等の多くの人と交流するチャンスを得られる職業だと思います。スタートアップ支援を行う際に、疑問点を相談し合える人がいることや、起業家のニーズに合う人を紹介出来ることは公認会計士の強みだと感じました。今回の勉強会も一つの交流の場となれたかもしれません。パネラーの皆様のお話しやグループワークを通じて、公認会計士ならではのスタートアップ支援を学ばせて頂きました。

 

 今回パネラーを引き受けて下さった粟野氏、権氏、廣田氏を始め、勉強会にご参加頂いた皆様、そして勉強会の準備をして頂いた皆様に準会員会一同厚く御礼申し上げます。 今後も日本公認会計士協会準会員会近畿分会は様々な勉強会を企画して参りますので、皆様のご参加を心よりお待ちしております。

 

以上

 

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