第3回 守秘義務について考える。
みなさんこんにちは。今回は、守秘義務について考えたいと思います。守秘義務とは、簡単に言えば人の会社の秘密を他人に教えてはいけないということであり、会計士だけでなく弁護士、コンサルタント、のように他人の秘密を業務上知りうる職業の方は、耳にタコができる程よく聞く言葉ですよね。また、一般の企業においても自分の会社の秘密を外部の人間に教えてはならないという社内規則があるのが一般的だと思います。
会計士の守秘義務については、監査人は業務上知りえた事項を正当な理由無く他に漏らし、または窃用してはならない(監査基準)、の規定をはじめとして多数の規定があり、義務違反をした場合には厳格な罰則を受けるとされています。しかし、守秘義務の範囲は結構あいまいなものであり、どこまで喋ってよくてどこから喋っちゃいけないのかというのは、本人の倫理観によるところが大きいと思います。監査法人によってもある法人は自分が担当している会社の名前さえ他人に言ってはいけないのに対して、一方ではある法人は会社の名前くらいはいいだろうと考えているようです。結構グレイゾーンは多いのでしょう。難しいところです。
さて、先日こんな事がありました。と言いつつ、内容をそのまま書いてしまうとそれこそ守秘義務違反になってしまうので、話の骨格以外の内容は仮の内容にしています。
私はもうすぐ合併することを考えている会社に監査にお邪魔していました(ということにします)。そして、その日の仕事が終わって主任と一緒に帰る時のことです。私は新人でしたので、とにかく先輩にいろいろ質問して早く一人前になれるようにと意気込んでいました。そのため、この帰り道でも、先輩と話せるいい機会と思って色々質問していました。もちろん、伺っている会社についての話題はしていません。そして、話の流れでたまたま合併に関する会計処理の質問をしました。もちろん、私は伺っている会社が合併を考えているからそれと関連して質問したのではなく、色んな会計処理を聞く過程で偶然その話題が出ただけでした。ところが、すかさず先輩に「そういう内容の話はするべきではない」と注意されました。そのときは、正直言ってそれは神経使いすぎだろうと思ってしまいました。
ところが、よくよく一人になって考えていると自分の考えが浅かったと思い直しました。もし、私たちが合併関係の会話をしている時にその話を会社の方が聞いていたら、「こいつら人の会社の秘密をこんな場所で話している!!コノヤロウ。」と思い込まれ、致命的な不信感を抱かれるかもしれないからです。つまり、守秘義務とは自分が秘密を実際に言わないということだけでなく、会社の人にも疑われないようにする事が大事だと気付いたのです。言ってみれば当然の事なのですが、この経験からあらためてそういうことを認識させられました。これ以後、会社や事務所の外で会計関係の話題をするときは非常に慎重に話をすることにしています。
みなさんはどう感じたでしょうか。もともとそのくらい当然の心構えと思っている方もいらっしゃったでしょう。正直いうと、誰でも自分の仕事を人に言いたいという気持ちはあるかと思います。ただ、クライアントの会社の方々の信頼の上で我々の仕事が成り立っているという事を考えると、口を堅くしないとなぁ、と最近特にそう思って仕事をしています。
(文責:合場 真人)