「会計士業界の変化と、これからの会計士に求められるもの」川島崇さん 株式会社ディー・エル・イー(ベンチャー企業・CFO)
講演者略歴介川島
職業紹介:法人以外の職業に就いている会計士の方々が、どのような仕事をしているか。また会計士としての知識が、どのような形で役に立っているのか。現在、CFO兼経営管理本部長として、経営及びバックオフィス全般を統括した業務を行っています。経営企画が80%、他が経理、法務等。経営計画、組織デザイン、事業戦略、グルーバル戦略、業務提携・M&A、知的財産戦略、資本政策、資金調達、人事制度、ERPシステム導入等の立案・実行等、幅広い内容です。 転職の経緯:監査法人を辞め、新たなフィールドに移られた際に、どのようなことをお考えでいらっしゃったのか、また決め手となったことなど。学生の頃より、経済界で勝負したい、経営に携わりたいと考えており、自分の武器としてファイナンスの知識を得るため公認会計士、経営理論を学ぶため中小企業診断士の資格を取得しました。その夢の実現のために転職を決断したのですが、その過程において、まずは転職ありきではなくゼロベースで、人生をかける価値のある本当にやりたいことと、監査業界・転職候補先業界の展望を整理しました。 当初はアドバイザーとして経営に携わる「独立」と「コンサルティングファーム」も考えました。しかし、独立はいつでもできますし、他の会計事務所との差別化能力を身につけてからの方がよいと考えました。また、「経験に勝る知識なし」と考え、アドバイザーであるコンサルティングファームへ回り道をするのではなく、プレイヤーとして修羅場をくぐり抜ける経験を得るため事業会社、さらに権限の委譲度合や成長速度の速いベンチャー企業を転職先に選択しました。 監査法人でできること:(正会員でない)準会員が1年ないし2年は法人にとどまると考えている前提で、転職を見据えて監査法人で何をすべきか。転職の有無に関わらず、プロフェッショナルとして、クライアント視点で問題を発見し、課題解決のサービスを提供するといった行動特性を身に着けることが重要だと思います。日々の仕事で、監査チームをもクライアントととらえ、付加価値の高いサービスを、自分は提供できているのかと意識されてはどうでしょうか。単純に与えられた仕事をマニュアル通りに真面目にこなしているだけになっていないでしょうか? これからの会計士に求められるもの:会計士が大幅に増加している中、他の会計士と差別化する上で考えなければならないこと、求められる能力等。労働市場でも差別化ができない(自身の市場価値が低い)と、通常、価格競争となり厳しい環境に陥ることになります。他の会計士の参入(競争自体)が少なく、自分の強み(差別化能力)を活かすことで希少性の高い存在になれる労働市場で闘うことが競争戦略のセオリーです。そういった意味では、資格があるのが当たり前で大量参入状態の監査法人は、強烈な競争市場かもしれません。キャリア設計に当たっては、差別化能力は何でもいいのではなく、自分は何を強みとして何をしたいのか、一方で外部環境の現状はどうか、将来のトレンドはどうなるのかということを把握・推測し、両者のバランスを図ることが必要だと思います。やりたいことでも時代に合っていない職業、時代に合っていてもやりたいことではない職業では、いずれも長期的には成立しません。 転職してよかったと思うこと今のミッションは、企業価値の最大化のみです。CEOのアイデアや外部環境の変化などビジネスチャンスの種を定量化し、論理的に整理し、合理的な意思決定を行うなど、戦略参謀的な役割を担っています。具体的に与えられる定型作業はなく、経営を意識しながら自ら課題を発見し、解決策を実行しています。また、常にマニュアルも前例も十分な情報もない中で、迅速に意思決定を下す必要がありますが、今はそのスピード感・緊張感を楽しんでいます。転職後の仕事は、前述のとおり経営企画の仕事がメインでした。ベンチャー企業の著しい成長力に食らいついてきた1年でしたが、まさに「環境が人を育てる」のとおり、多くの経験をつめ、私自身の成長速度も加速したのではと思っています。 準会員に対するメッセージ転職市場では会計士は保守的な人種で流動性がないと言われますが、私はそうは思っていません。既に資格を取るまでに多くのリスクを取った人が大半であり、本来リスクコントロールができる人種だと思います。今一度、自分は何のためにリスクを取ったのか思い返してください。そして、もし転職が選択肢にあるのであれば、失敗をおそれずにチャレンジして欲しいですね。自分を振り返れば、“あの時”に転職しなければ、今の会社に出会うことも自分を成長させることも無かったと思います。チャンスは簡単に逃げます。自分が逃した席には、他の人が座るだけ。そして同じ機会は二度と巡ってきません。チャンスを逃さないためには、“転職するリスク”より、むしろ“転職しないリスク”を意識すべきでしょう。 |