日本公認会計士協会 準会員会

インタビュー
( JIJAジャーナル )

海外で働くということ。

シドニー編②(PwCオーストラリア 原澤 哲史氏)

【ご経歴】

PwCオーストラリア 金融部 マネージャー

2004年に中央青山監査法人金融部に入所。その後、あらた監査法人(現PwCあらた監査法人)の金融部に移り、金融機関を中心に会計監査やアドバイザリー業務に従事する。2014年にPwCオーストラリア(シドニー)に出向し、現地企業の監査や日系企業のサポートを行っている。公認会計士。
今回、準会員会では海外で働く公認会計士にインタビューをし、キャリアとしての海外経験について記事にさせていただきました。将来のキャリアを海外で積みたいと考える準会員や受験生に向けて、メッセージもいただいておりますので、お楽しみください!!

①まず、公認会計士を目指されたきっかけについて教えてください。

私は大学を卒業して銀行に就職をしました。銀行では融資業務を担当しており、日々財務諸表を見ながら仕事をする中、ある時“企業再生”の仕事で、公認会計士の方と再生計画をつくる機会がありました。その公認会計士の方が、ご自身の知識と経験に基づくアドバイスをしているのを見て、なんて素敵なのだろうと強く思いました。自分の中でしっかりと勉強して、知識を身につけ、もう一度仕事に反映させたいという気持ちが強く湧き上がりました。そうして銀行を1年半ほどで退職し、公認会計士試験の勉強に専念しました。

②公認会計士人生を歩む中でのターニングポイントについて教えてください。

私は日本で9年半ほど金融部に所属していましたが、ターニングポイントは常にあったと思います。
四半期、J-SOXやIFRSと外部環境が少しずつ変わっていくとともに、職階が上がっていく中で求められる役割が変化するため、少しずつ自分を変えていかなければならないからです。また、監査法人は、プロフェッショナルが集まった組織文化です。非常に自由度が高い一方で、自分のキャリアは自分で責任をもたないと、いつの間にか何も通用しなくなります。常に自分自身がどうしていきたいかをしっかりと考えておかないといけません。海外での業務は、異なった環境で様々な経験をすることができますので、そういった意味では、現在進行形で大きなターニングポイントを経験しているのかもしれません。

③海外で働かれてよかったこと、大変だったことについて教えてください。

やはりコミュニケーションが大変です。日本独特の「あうんの呼吸」はありませんので、何も言わなければ誰も何もしてくれません。一方で、ここがわからないので教えてくれとはっきり言えばちゃんと助けてくれます。思ったことをしっかり口に出し、具体的に褒めたりするところなど、全く日本と違いました。私は英語が得意な方ではないため、今でも自分の話したいことの半分ぐらいしか伝わらず、相手の言っていることの半分ぐらいしかわからないこともあります。これでは日本語と同じ100%の会話をするのに4回程キャッチボールが必要になり、時間がかかってしまいます。そのためミーティングの準備では、事前にアジェンダに沿って話すことをある程度決め、これだけは伝えようと紙に書いて手元に持っていきます。ミーティング後には、アクション事項を確認することを徹底して、ミスコミュニケーションを減らすようにしています。

④海外の事務所と日本の事務所の違いというところはありますでしょか。

まず、スタッフからパートナーまでフラットな関係であることです。パートナーにでも「ハイ! クリス!? ちょっといい? 」といった感じで気軽に話しかけることができます。またワーク・ライフ・バランスをとるのも上手いと感じます。「ワークハード、プレイハード」と言って仕事も遊びもしっかりと、金曜日は夕方ぐらいからどこもパブが満席です。さらにダイバーシティーです。日本と比べ、様々な異なる環境で育った価値観の違う人たちが集まっているというのもありますが、どうすれば最高のパフォーマンスを発揮できる職場にすることができるかいうことをよく考えていると思います。社内のイベントという点では飲み会はもちろん、スポーツ大会やチャリティー活動も多いです。これは日本と比べても、離職率が高いため、お互いをよく知るために開催されているという面もあります。

⑤最後に、業界を担う若者にメッセージをいただけますでしょうか。

これから業界を担う若い人には、新しい機会に積極的に挑戦して、人との出会いを大切にしながら、日々一生懸命頑張ってもらいたいなと思います。今、自分が一番苦労しているのは英語です。あの時もうちょっとやっておけば、今もっとコミュニケーションがうまくとれて、もっとエンジョイできているかもしれないなと思いつつ、今も勉強しています。自分の可能性を広げるために、会計監査に限らず他の分野のことも勉強してもらいたいです。勉強というのは本だけではなく、人に出会ったり、いろいろな経験をしたりすることもそうです。日々一生懸命頑張っていれば、様々な機会が出てくると思いますので、そういった機会があればぜひチャレンジしていただきたいと思います。

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