日本公認会計士協会 準会員会

インタビュー
( 会計業界 )

安藤 洋太氏

 

大学在学中に会計士試験に合格。

合格後、2年間TACで簿記の講師として活躍。
その後、朝日監査法人(現あずさ監査法人)に入所。
2007年9月に本田技研工業株式会社へ転職し、
現在、経理部単独会計課に在籍。

夢実現に向け、会計士としての強みを活かせ

-会計士資格の取得理由について教えて頂けますか?

高校生の頃から、会計士の資格については知っていました。高校が大学の付属校であったため、大学受験よりも大学生活や大学卒業後のことを考えている人間が多く、会計士や弁護士といった資格についても身近な存在でした。ただ、高校時代はラグビーに熱中していたため、私自身は、将来のことについて、あまり真剣に考えていませんでした。
高校3年の冬にラグビーを引退した私は、大学の学部選択を迫られました。そこで、商学部を選択したことが、私が会計士を目指す第一歩になったと思います。私の実家がスポーツ用品店を営んでいるせいもあってか、商売というものに興味があり、実社会で役に立つ知識を身に付けたいという思いから、商学部を選択しました。
商学部で、簿記論や財務会計論、管理会計論等を学んでいくうちに、これらをマスターすることは、将来、ビジネスの世界で生きていくうえで、必ず役に立つものであると感じました。そして、これらの知識をより強力な武器とするために、会計士資格に挑戦する事を決意しました。

-現在のお仕事について教えて頂けますか?

ホンダは前期において、退職給付制度の変更を行いました。退職給付制度の変更は、特殊な事象であるため、前例を参考に会計処理をするという方法が通用しません。会計理論に基づき、ゼロからあるべき会計処理を構築していくことになります。そういった場面では、会計士の知識が役に立ちました。
また、現在、進めているIFRS対応プロジェクトにおいては、IFRSと日本及び米国の会計基準の差異を分析し、ホンダの決算に与える影響や、今後の対応方法の検討を行っています。この業務についても、日本の会計基準及びその背後にある会計理論を熟知していることは大きな強みです。特に、会計理論の根本的な部分を理解していれば、なぜ、IFRSや日本及び米国の会計基準がこの規定を作ったのかということを考え、理解することができます。
IFRSについては、私も勉強中です。今後、世界の会計基準がIFRSに統一される方向性は間違いないと思いますが、日本の会計基準及びその背後のある会計理論をマスターした方々にとっては、IFRSのマスターはそれほど難しいことではないと考えています。ただ、私の場合は、英語が大きな壁となっていますが・・・

-監査法人から事業会社に移られた理由を教えてください。

監査法人で会計監査の業務を行っていくうちに、会計情報をチェックする側ではなく、 会計情報を作成する側の仕事に魅力を感じたからです。これは、あるスポーツにレフェリーとして参加するうちに、プレーヤーとして参加したいという欲求が生まれるのと同じだと思います。そして、財務会計の分野にとどまらず、管理会計、税務及び資金繰りから経営企画等の様々な分野を経験したいという思いから、事業会社を選択しました。
自動車業界を選んだ理由は、私自身が自動車を好きであること、そして自動車は人・モノの移動のための身近な手段であり、人々の生活を豊かにできる道具であるため、それらを通して、人々の暮らしに貢献することができると考えたからです。また、自動車産業は非常に裾野が広く、日本はもとより世界経済に大きな影響を与える産業です。さらに地球温暖化や石油資源の問題といった地球規模の問題とも直接係わっている点でこれらの問題解決にも貢献することが可能であると考えたからです。そのような自動車業界においてホンダを選んだ理由は社員の「夢」というものを大切にしている姿勢や自由闊達な風土に魅力を感じたからです。

-監査法人で働くことと事業会社で働くことの違いについて教えて頂けますか?

監査法人(特に会計監査を行う部門)の存在意義は、財務諸表の適正性を判断し、その意見表明を行うことにより財務諸表に信頼性を付与することです。株主、債権者、投資家さらには、クライアント企業からの監査法人に対するこの特定のニーズを満たすことです。従って、会計監査においては意見表明を行うための証拠収集や理論構築が主な業務であると思います。

一方、事業会社の存在意義は、世の中に存在するありとあらゆるニーズを満たすことです。当然、対象領域はそれぞれの事業会社によって異なり、多角化している企業もあれば特定の分野に集中している企業もあると思いますが、監査法人と比べると事業会社が対象とすべきニーズが存在している範囲は、非常に広いと言えます。従って、私たち経理部門の人間もそういった会社の目的を達成するために存在しているということを認識する必要があり、また、経理関係の領域のみならず、会社の事業に関する幅広い知識が要求されます。

-話は変わりますが、試験合格者がそのまま事業会社に勤めると、なんらかの苦労をすることは想定されますか。例えば準会員は補修所に通わなくてはならない等の契約もありますが・・・。

試験合格者の就職先が、事業会社だろうが監査法人だろうが苦労することは想定されます。というのも、試験に合格しただけでは、机の上での知識は身に付いていますが、実践で使える知識になっておらず、実務を通じて勉強していく必要があるからです。実務においては、周りの人間とコミュニケーションを図り、仕事をこなしつつ、勉強するといった要領の良さが求められ、試験勉強の時とは環境が激変します。
事業会社特有の苦労として考えられるのが、補修所です。私は補修所終了後にホンダに入社しましたので、補修所という点では特に苦労はありませんでした。試験合格者が、そのまま事業会社に勤めて補修所に通う場合には、会社側の理解と協力が不可欠です。補修所制度の見直しが必要になる可能性もあると思います。

-事業会社において、会計士試験合格者のような知識のある人間を採用したいという意向はあると思いますか?

ニーズはあると思います。知識のある人は歓迎されるでしょうし、また知識のある人材が広く社会に浸透していくという流れは、適切な財務諸表の作成を後押しし、日本経済の発展に貢献していくことになります。ただ、今までそういう流れがなかったですから、すべてはこれからだと思います。

-合格者に対してメッセージをお願いします

会計士試験を通じて勉強してきたことは必ず自分の強みとして活きてきます。今後は、その強みを自分のやりたい事、「夢」にどのように結び付け、活かすかを考えて下さい。そうすれば自然と道は開けてくると思います。

-心に響くお話を、ありがとうございました。

(文責:與世田 雄大)

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